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2012年1月9日月曜日

【山崎解説・想定外をどう考える?】2011年04月10日 (日)

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東京電力福島第一原子力発電所の事故で、先月11日の津波は、建物や設備に残された跡から、最大で15メートルの高さに達し、主要な建物があるほぼ全域で高さ4メートルから5メートル程度浸水していたことが分かりました。
「想定外」と関係者が口にする大災害。ではどんな備えが必要だったのか。山崎記者が解説します。


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山崎記者:
東京電力が公開した映像によると、発電所の施設に津波がぶつかり、20mくらいの高さにしぶきがあがっています。津波のパワーを改めて感じさせる映像ですね。この津波によって発電所の設備も非常に広範囲に浸水してしまいました。

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浸水したエリアを青色で示しますが、原子炉建屋やタービン建屋など主要な建物のほとんどが浸水していることが分かります。もう少し詳しい写真を見てみましょうか。

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写真の下が海側で、こちらから津波が襲ったと考えて下さい。
下の方に黄色い線を引いた施設が、ポンプです。

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これは原子炉を冷やすための海水を引き入れるポンプなんですね。
このポンプが完全に破壊されていることが一つ、重要なダメージです。


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もう一つ注目したいのは、このタービンの入っている建屋ですね。この丸をつけたところは、機械を搬入するための大きなシャッターがあるんですが、これが津波の勢いによって完全に壊されているのが分かります。
こういった重要な設備が壊れるとどうなるか。次の図で見てみましょう。


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この図で右側にあるのがポンプ。写真では一番海側にあったポンプです。ポンプで冷たい海水を引き込みますが、このポンプが壊れてしまいました。

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そのため、原子炉の核燃料を冷やす冷却装置が使えなくなって、原子炉の中の熱を冷ますことができなくなった。これが事態をここまで悪化させた要因の一つです。

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もう一つ、先ほどの写真で、シャッターが壊れていました。
シャッターが壊れて海水が建屋の中に入り込み、この地下1階に非常用の発電機があったんですね、発電所内の電力を維持する重要な役割を持っているんですが、これが海水で使えなくなってしまいました。
こういう緊急時にバックアップする設備がことごとく津波によって使えなくなってしまったわけです。
こうしたバックアップの設備の配置について、津波に対して十分な準備できていたのかという疑問が残ります。


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山崎記者:
今回の事故では「想定外」とか「想定を超えた」ということばが何度も聞かれます。これをどう考えたらいいのでしょうか。
ここまで大きい原子力災害を起こしてしまった今となって、国や電力会社はもう住民に対して、「想定外」という説明はできないと私は思います。
例えば1999年茨城県東海村でおきた臨界事故。日本では臨界のような大きな事故は起こらないと言っていながら燃料工場で起こった。取材に対して盲点だったと関係者は説明しました。
そして2005年の宮城県沖地震による女川原発で観測された揺れ。続いて2007年の中越沖地震による柏崎刈羽原発の被害。これらの地震の揺れも国の指針による設計の想定を超えていたんですね。何度も「想定外」ということが起きている。
こうしたことを考えると、国や電力業界は「起きないかもしれない」ではなく「起きるかもしれない」という姿勢を持つべきだったということが一つ。

もう一つは国や電力業界は、新しい発見、例えば「もっと大きな津波が来るかも知れない」、「大きな揺れが来るかも知れない」、そういった研究や発見に対して、すぐに得られた知見や成果を取り入れて、先手先手を打って施設を補強する、新しい安全管理のルールをつくる、こうしたことをしてきませんでした。
今回も「大津波については研究をしていた途中でした」との説明が業界からあります。
中越沖地震の際も、「大きな揺れについて研究していましたし、取り入れようとしていた」との説明がありました。それなのに全部、後手後手。
国と電力会社は、上記のような硬直化した体制や組織文化では、もはや原発利用に対して国民の理解を得ることはできないと思います。

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